インプラントを始める前に知っておきたいこと
インプラント治療は、自分の歯を失った場合にその箇所を補うための治療方法として、大変有効な治療方法です。本記事でインプラント治療をはじめて受ける方や、現在インプラント治療を検討中の方に向けて、インプラント治療をはじめる前に知っておきたいことについてお話しします。
インプラント治療の基本やメリットデメリット
インプラント治療は、自分の歯を失った際に機能性と審美性を取り戻すために行われる、近年人気のある治療方法です。失われた歯の代わりに人工歯根であるインプラント体を顎骨に埋め込み、その上に人工歯を装着します。インプラント体は、生体親和性の高いチタン製でできており、骨と結合しやすく、ブリッジや入れ歯と比較すると安定性に非常に優れており、見た目の美しさや快適な使い心地も長期間にわたって持続します。
インプラント治療のメリットとして、自然な見た目と使い心地、長期間使用可能な耐久性、周囲の健康な歯に影響を与えないなどが挙げられます。従来のブリッジ治療では、隣の歯を削る必要がありますが、インプラントではそのようなことはありません。また、入れ歯と異なり、インプラントはしっかり固定されるのでずれたり外れたりする心配もありません。
一方で、デメリットとしては、手術が必要であること、治療期間が長いこと、そして比較的高額な治療費がかかることなどが挙げられます。
インプラント治療の流れ
インプラント治療の一般的な流れは下記の通りです。※歯科医院によって異なる可能性があります。
①カウンセリングと事前検査
まずはカウンセリングを行い、患者様の口腔内の状態を詳しくチェックし、インプラント治療の適応可否判断が行われます。X線やCTスキャンなどを用いて、骨の量や質、神経や血管など組織の位置を正確に把握します。ここでは患者様の希望や不安、質問に対しての対応も行われます。
②治療計画の立案
検査結果を基に、患者様ごとに治療計画が立案されます。インプラントの本数、位置、手術の方法、治療期間、費用などが詳しく説明され、同意を経て治療に進みます。
③外科手術(1次手術)
インプラント体を顎骨に埋め込むための手術が、局所麻酔を用いて行われます。手術自体は通常1〜2時間程度で終了しますが、複数本の場合や骨移植が必要な場合は時間が延びることもあります。
④治癒期間
インプラント体と顎骨の結合期間は、数ヶ月を要します。この期間、インプラントがしっかりと骨に結合するのを待ちます。
⑤2次手術
結合完了後、インプラント体の上にアバットメントと呼ばれる連結部品を取り付けるための2次手術が行われます。
⑤人工歯の装着
最後に人工歯(クラウン)をアバットメントに装着して治療完了です。
インプラント治療で制限を受ける可能性があるケース
インプラント治療は健康状態や口腔内の条件によっては制限を受けるケースがあります。
・糖尿病、心疾患、免疫抑制状態などの全身的な疾患を持つ場合
・顎骨の量や質が不足している場合
※骨移植やサイナスリフトといった手術が必要になることがあります。
・喫煙習慣がある場合
・健康状態が良好ではない高齢者
インプラント治療の相場
インプラント治療は高度な技術を必要とし、自費診療なので、費用は他の歯科治療に比べて高額です。日本におけるインプラント治療の相場は、1本あたり約30万〜50万円です。また、骨移植やサイナスリフトなどの追加手術が必要な場合、その費用は別途加算されるため、総額はさらに高くなることがあります。費用に関しては、歯科医院によって分割払いなどの支払い方法が用意されていることもあるほか、医療費控除を活用することで負担が減らせますので、カウンセリング時に相談してみると良いでしょう。インプラント治療は一時的にかかる費用は大きいですが、長持ちするので長い目で見ると大変コストパフォーマンスに優れている治療と言えます。費用対効果を考えると妥当な金額と言えるでしょう。
インプラント治療の外科手術について
手術は通常、局所麻酔で行われます。局所麻酔とは、手術部位のみを麻酔する方法であり、患者様は手術中に意識があり、周囲の状況や音、会話を認識できます。麻酔が効いているため、手術中に痛みを感じることはほとんどありませんが、希望に応じてセデーション法を用いて、リラックスした状態で手術を受けることも可能です。
インプラント治療の術後の痛みや腫れについて
インプラントの手術後、麻酔の効果が切れてくると痛みや腫れなどの症状が起こります。
これらは手術による組織の損傷や炎症反応が原因で起こる自然な症状なので、心配はありません。一般的に手術後数日から1週間程度で痛みや腫れは軽減することが多いですが、体質や手術の内容によって異なります。歯科医院から処方される鎮痛剤を適切に使用したり、冷却シートやタオルを使って冷やすことで、痛みを和らげることができます。また、腫れに関しては頭を高くして寝ることもおすすめです。術後の経過をよくするためには、血行を促進させる運動や入浴、アルコールやタバコを控えることが重要です。指示された薬をしっかりと服用し、無理をせず安静に過ごすことが痛みや腫れの早期回復に繋がります。痛みや腫れが長引く場合や、異常な症状が現れた場合は、早めに歯科医院に相談しましょう。
大量出血や明らかに大きな腫れなどが見られる場合は、感染症が原因で起こっている可能性もあるので緊急の対応が求められることもあります。
インプラント治療後のお手入れやメンテナンス
インプラント治療後は、快適に使用し、長く使い続けるためには日々の適切なケアと定期的なメンテナンスを行うことが重要になります。インプラント治療が成功したとしても日常的なケアを怠ってしまうと、インプラント周囲炎などの問題が発生し、最悪の場合インプラントの脱落につながることがあります。
・セルフケア
日常のケアとしては、天然歯と同様に、毎日のブラッシングとデンタルフロスを使用したフロッシングが基本です。特に、インプラント周囲の歯肉とインプラントの接合部を丁寧に磨くことが重要です。インプラント専用の歯間ブラシやマウスリンスを使用することで、さらに効果的にケアを行うことができます。
・定期的なメンテナンス
歯科医院での定期的な検診は、インプラントを長持ちさせるために欠かせません。少なくとも半年に一度は歯科医院で診てもらい、プロフェッショナルクリーニングを行うことがおすすめです。検診では、インプラントの状態や周囲の組織の健康状態を確認し、必要に応じて適切なケアを行います。
まとめ
いかがでしたか?これからインプラント治療をはじめる方は、注意点やポイントを事前に知っておくことで治療開始前と開始後のギャップも少なく、安心して治療を受けられます。
本記事で紹介したこと以外にも、不安や疑問などがあれば、お気軽にご相談ください。インプラント治療を行う前には必ずカウンセリングが行われますので、そのときに聞きたいことをあらかじめ準備しておくとスムーズです。